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2025.10.24
ー社労士報酬額の目安と決め方——相場を読み解き、ムダなく依頼するための実践ガイドー

社労士の報酬額はどう決まる?基本の考え方
社労士の報酬額は「作業量」「難易度」「緊急度」「責任の範囲(代理権・是正勧告対応の有無)」「継続性(単発か顧問か)」で構成されます。さらに、会社の規模や拠点数、従業員の入れ替わり頻度、就業規則や勤怠システムの整備状況など実務の手間を左右する要素が加わります。まずは作業範囲を明確にし、成果物とスケジュールをセットで定義することが、妥当な報酬額を見積もる近道です。
料金体系の種類:顧問・スポット・成功報酬
料金体系は大きく三つです。毎月の相談や手続きの土台を整える「顧問」、必要な時だけ依頼する「スポット」、助成金など結果に応じて支払う「成功報酬」です。実務ではこれらを組み合わせて最適化します。採用変動が大きい時期は入退社手続きのスポットを増やし、落ち着いた時期は顧問の範囲に寄せると総額をコントロールしやすくなります。
顧問(定額・月額)
・労務相談(電話・メール・オンライン会議の上限回数)
・法改正情報の提供、就業規則の軽微な修正、入退社や社会保険の定型手続きの一部
・年次業務(労働保険の年度更新、算定基礎届)を含むかは契約で差があるので要確認
スポット(案件ごと)
・就業規則の新規作成・全面改定、賃金規程の整備、36協定や変形労働制の設計
・未払い残業やハラスメント対応など、調査・改善計画を伴うコンサルティング
・行政調査・是正勧告対応は、出面(日当)や成果物の負荷で加算されるのが一般的
成功報酬(成果連動)
・各種助成金の申請支援では支給決定額の一定割合を成功報酬とする慣行が多い
・返戻や不支給の際の再申請サポートが含まれるか、実費の扱いと併せて確認
目安となる相場感:業務別の考え方
相場は地域と事務所の体制でばらつきますが、業務の難易度と時間見積もりから逆算すると見通しが立ちます。ここでは「考え方の目安」を示します。具体の金額は見積もりで確定させましょう。
月額顧問の目安の考え方
・従業員数が増えるほど相談頻度と手続きが増えるため段階的に加算する
・窓口が複数(本社+支店)やシフト制・変形労働など制度が複雑な場合は難易度係数を上乗せ
・チャット即時対応や緊急対応枠、訪問回数はオプションとして切り分ける
就業規則・規程整備の考え方
・現状ヒアリング→ドラフト→運用設計→説明会までの総工数で見積もる
・兼ね合う制度(評価・賃金・勤怠)との整合を図るほど工数は増える
・モデル就業規則の転記ではなく、自社運用に落とす作業に価値が生まれる
手続き代行の考え方
・入社・退社、育休・産休、傷病手当金、資格取得・喪失、算定基礎や月変などは件数×単価
・電子申請でスピード化できるが、賃金台帳や証明書の整備状況で手間は大きく変動
・急ぎ案件は割増のルールを事前合意しておくとトラブルを防げる
企業側が費用を最適化する5つのコツ
報酬額を“下げる”ことだけが正解ではありません。再発防止や生産性向上まで含めると、トータルでコストダウンにつながる設計が可能です。以下のコツを取り入れると、見積もりの透明性が上がり、無駄な追加費用を避けられます。
1. 作業範囲を明文化する
「何を誰がいつまでに」を一覧化し、形式と納品物を定義します。入退社の起票期限、マイナンバー回収、証明書の原本管理など、企業側の役割も明記しておくと追加費用が発生しにくくなります。
2. データ整備で“待ち時間”をなくす
社員名簿、雇用契約、賃金台帳、勤怠データの整合が取れていれば、手戻りが激減します。クラウド勤怠や人事労務ソフトを活用し、ファイル形式や提出サイクルを標準化しましょう。
3. 年間イベントを前倒しで計画
算定基礎・年末調整・就業規則見直しなど、定例行事は早めに着手。繁忙期を避けることで割増や緊急対応が減り、品質も安定します。
4. 相談チャネルを一本化
担当者・連絡方法・回答期限を固定し、同じ質問の多重送信を防止。Q&Aをナレッジ化すれば顧問時間の消費が減り、報酬の上振れを抑制できます。
5. “成果指標”で合意形成
「未払い残業の是正率」「勤怠エラーの減少」「人事労務ソフトの定着率」など、効果を測るKPIを最初に設定します。価値が可視化され、双方の満足度が高まります。
見積もり比較のポイント:チェックリスト
複数事務所から見積もりを取る際は“安さ”より“前提条件の違い”を読み解くことが重要です。以下の観点で粒度をそろえると、真に比較可能な土台ができます。
チェック項目
・顧問の範囲(相談時間、定例会、年次手続きの含有)
・スポットの単価と最低料金、緊急時割増のルール
・訪問回数と出張費、オンライン対応の可否
・文書作成の範囲(議事録・規程改定通知・個別同意取得など)
・人事労務ソフトの設定支援と保守の扱い
・助成金の対象範囲、成功報酬の発生条件とタイミング
・不支給・返戻時の対応(再申請の可否、追加費用)
ケース別モデル:こう考えると納得感が高い
企業の典型ケースを二つ挙げ、報酬設計の考え方を示します。実際の金額は事務所ごとに異なるため、あくまで「配分の思想」を掴む材料として読み替えてください。
ケースA:従業員15名、初めての就業規則整備
・現状ヒアリングと課題抽出→ドラフト作成→労使協議→説明会→運用手順書の作成
・36協定や変形労働の導入有無で工数が増減。評価制度との接続を最小限に留めると費用最適化
・納品後1か月の運用QAをオプションにし、定例顧問に移行して保守を回す
ケースB:従業員80名、入退社が多いサービス業
・顧問の範囲に「入退社手続きの標準件数」を含め、超過分は件数課金
・勤怠エラーの一次チェックを企業側に寄せ、社労士は是正・運用助言に集中
・繁忙期の前倒し面談を設定し、36協定やシフト設計の改善で残業規制リスクを抑制
契約時の注意点:トラブルを未然に防ぐ条項
契約書は“いざという時”の安全網です。報酬額に関する条項は明瞭かつ相互に公平であることが大切です。以下の条項は見落とされがちなので、事前に確認しましょう。
重要条項
・範囲外作業の定義と単価、緊急対応の割増率
・秘密保持・個人情報の取り扱い、再委託の可否と責任分界
・成果物の定義(ファイル形式・版数・検収期限)
・契約期間と自動更新、解約通知の期限、途中解約時の精算方法
・紛争時の協議・管轄合意、行政調査立ち会い時の費用扱い
まとめ:報酬額は“作業の見える化”で納得が生まれる
社労士の報酬額は、単なる数字ではなく「どんな成果を、どの品質で、どのリスクを抑えながら提供するか」の翻訳です。作業範囲と成果指標を言語化し、繁忙期を避けた計画、データ整備、チャネル統一という“運用の型”を取り入れれば、費用対効果は着実に高まります。相見積もりでは前提をそろえ、納品後の運用まで見据えた設計で、あなたの会社に最適なパートナーを選んでいきましょう。