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2023.02.24
社会保険労務士と中小企業診断士の違いとは?役割・依頼できる業務
企業を運営していくうえで相談できる専門家には社会保険労務士と中小企業診断士があります。
しかし、社労士と中小企業診断士の2つ専門家がどのような分野を扱っており、どこに違いがあるのか分からない、という方も多いでしょう。
この記事では、社労士と中小企業診断士の違いについて解説します。
社労士の役割
企業経営において重要となるのは、「人」「モノ」「金」の3つの要素だと言われています。
社労士はそのうち「人」に関する専門家としての役割を持っています。
労働者が安心して働くことができる環境の整備は、企業の成長に欠かせない土台となります。
中でも、社会保険の取り扱いや労務管理は法令を遵守する必要があり、法令の改正も頻繁に行われているため、常に対応することが求められます。
しかし、経営者や総務担当者がすべてに対応していると日常の業務が圧迫されてしまいます。
そこで社労士に業務をアウトソーシングすることで業務を軽減することができます。
社労士には独占業務があり、各種申請手続や帳簿書類などの作成は社労士にしか依頼することができません。
社労士に依頼することで社会保険、労働保険関連の手続きや給与計算などの業務の負担を減らすことができます。
さらに社労士は、人事労務関連に関してのコンサルティングも行うことができます。
社労士にコンサルティングを依頼して労働問題を避けることも可能です。
中小企業診断士の役割
中小企業診断士は、経営コンサルティングを主な業務としています。
経営コンサルタントとしての知識とスキルを認定する唯一の国家資格となります。
企業経営に精通する中小企業診断士は、さまざまな業務とアドバイスを通じて組織運営をサポートします。
マーケティングや財務分析、事業計画書の作成、労務関係の改善など、コンサルティングの分野は多岐に渡ります。
これら幅広い業務は専門知識を持っている中小企業診断士でこそできる仕事です。
専門性の高いアドバイスができるからこそ、経営者も安心してコンサルティングを任せることができます。
社労士と中小企業診断士の業務内容の違い
社労士と中小企業診断士の役割が分かったところで、それぞれの業務内容の違いを比較してみたいと思います。
◯社労士
<専門分野>
社会保険・労務・年金など
<主な業務内容>
・社会保険等の申請手続代行
・就業規則策定
・帳簿書類作成
・年金相談
・労働環境の相談・指導
など
<独占業務>
【1号業務】
・労働保険の書類作成
・提出代行
・健康保険
・雇用保険などへの加入
・脱退手続き、給付手続や助成金等の申請など
(社会保険労務士法第2条1項1号)
【2号業務】
・労働社会保険諸法令に従う帳簿書類の作成
・労働者名簿や賃金台帳の作成請負
・就業規則や各種労使協定の作成など
(社会保険労務士法第2条1項2号)
◯中小企業診断士
<専門分野>
経営コンサルティング
<主な業務内容>
・経営方針の診断
・財務諸表等の閲覧
・経営トラブルの相談
など
<独占業務>
・なし
社労士の業務内容
社労士の主な業務内容は
・労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成
・申請書等の提出に関する手続き代行
・労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類等の作成
・労務管理・社会保険に関するコンサルティング業務
・紛争解決手続代理事務(特定社会保険労務士に限る)
などです。
主に社会保険関係の申請書の作成や提出の代行、帳簿作成、労働問題に関するコンサルティングを依頼することができます。
給与計算業務は依頼できますが、年末調整に関しては税理士に依頼することになります。
紛争解決手続き代理事務は特定社会保険労務士のみができる業務です。
中小企業診断士の業務内容
中小企業診断士の主な業務内容は
・経営コンサルティング
・経営改善書や経営診断書の作成
・経営に関する専門知識の発信・出版
・セミナー、講演活動
・中小企業基盤整備機構や商工会議所での業務
・政府の支援活動の補助
などです。
主に経営に関する内容を相談することができます。
社労士試験と中小企業診断士試験の違い
次に社労士試験と中小企業診断士試験の内容や難易度の違いを比較してみたいと思います。
社労士
<受験資格>
次のいずれかに該当している方
・短大卒と同等以上の学歴がある方
・一定の実務経験がある方
・行政書士資格を有している方
<試験内容>
7科目
選択式:40問
択一式:70問
・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・労務管理その他の労働に関する一般常識
・社会保険に関する一般常識
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法
合格ラインは各科目最低40%、全体で60~70%以上の正解率が目安です。
<合格率>
約3~7%
<勉強時間>
約800~1000時間
<受験料>
15,000円
中小企業診断士
<受験資格>
特になし
ただし、資格や職歴によっては一次試験の科目が一部免除される。
<試験内容>
【一次試験】
・経済学・経済政策
・財務・会計
・企業経営理論
・運営管理(オペレーション・マネジメント)
・経営法務
・経営情報システム
・中小企業経営・中小企業政策
7科目のうち全科目を3年以内に合格すると二次試験に進むことができます。
【二次試験】
口述試験
1人10分程度。
数名の面接官を前に受験生は1名で受験。
題材となるのは筆記試験の事例で、いくつかの質問が投げかけられます。
<合格率>
約4~6%
<勉強時間>
約1000時間
<受験料>
一次試験:14,500円
二次試験:17,800円
社労士と中小企業診断士両方保有している専門家もいる
社労士のなかには中小企業診断士とのダブルライセンスを持っている社労士もいます。
その場合、社会保険関連のアウトソーシングや労務関係のコンサルティングのほかに、経営コンサルティングも同じ専門家に依頼することが可能になります。
企業運営に関して幅広く相談したい場合はダブルライセンスの社労士を探してみても良いでしょう。
依頼する社労士を探している場合は専門分野にも注目
社会保険労務士と中小企業診断士の違いについて解説しました。
それぞれ相談できる分野が異なりますので、相談内容に合った専門家に依頼することがポイントとなります。
また、社労士の中にも社会保険関係の代行業務や給与計算のアウトソーシングを取り扱っている社労士、年金専門の社労士、企業のコンサルティングのみを行っている社労士など、専門分野や得意分野がある場合も多いので、事前に相談したい内容やアウトソーシングしたい業務内容をまとめておき、依頼内容に合った社労士を探すことも大切です。