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2023.02.17
給与計算業務で社会保険労務士(社労士)ができることとは?
給与計算は従業員を雇い入れている事業所にとっては避けて通ることはできない業務です。
間違ってしまうと従業員からの信頼を失ってしまうという重要な業務でありながら、利益を生み出す業務ではないため事務処理に時間がかかってしまうのは得策ではないでしょう。
給与計算は社会保険に精通している社会保険労務士に任せることで企業の負担を大きく減らすことができます。
この記事では給与計算業務で社労士ができることとできないことをご紹介します。
給与計算業務の内容
給与計算業務では以下の事務手続きを行う必要があります。
従業員の基本情報の管理
従業員の
・氏名
・生年月日
・振込先
・異動・昇給
などの基本情報を登録、管理します。
勤怠記録の集計・管理
・勤務時間
・遅刻・欠勤
・残業時間
・休日出勤
・有給
など、勤怠に関わる記録を集計します。
控除項目の計算
社会保険料や所得税などの控除項目を計算し、総支給額の計算を行います。
社会保険料・源泉徴収税の納付
社会保険料、源泉所得税、住民税の納付をします。
社会保険料は
・雇用保険
・健康保険(介護保険)
・厚生年金保険
です。
雇用保険料は支給総額に保険料率を乗じて控除額を算出しますので、保険料が毎月変動します。
また、保険料率は年度ごとに決まり、率が変わることもありますので注意が必要です。
健康保険と厚生年金保険の保険料は原則固定です。
毎月7月に会社が算定基礎届を行い、各人ごとに9月以降の等級と保険料が決定します。
給与計算では、決定した保険料を給与から控除します。
給与明細書の作成・発行
給与明細書を作成し、発行します。
賃金台帳の作成
賃金台帳は、社員に支払う賃金の支払い状況を記載する書類で、労働基準法で作成や保存が義務付けられる「法定三帳簿」の1つです。
したがって、法律で定められた項目について余すところなく記載し、決められた期間、社内で保存する必要があります。
なお、法定三帳簿には賃金台帳のほか、労働者の個人情報が記載された「労働者名簿」、労働者の勤怠情報が記載された「出勤簿」があります。
社会保険労務士に依頼できる給与計算業務
給与計算
毎月の給与では残業代、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、所得税等の計算が必要となります。
さらにスタッフによって雇用形態が分かれている場合、月給、日給、時給と給与計算も煩雑になります。
そのため、全従業員の給与計算を自社スタッフだけで行うには相当な負担となります。
社労士は賃金台帳や社会保険関係の手続きができるため、毎月かかっていた給与計算に関する業務が削減することができます。
賞与計算
社労士には賞与に関する計算も依頼することが可能です。
賞与の計算でも雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、所得税等の細かな計算が求められます。
社会保険加入者は賞与支払届を作成して年金事務所へ提出しなければなりませんが、社労士はこの手続きも一括で行います。
住民税更新
事業主は個人住民税を特別徴収する必要があります。
年末調整のあとには給与支払い報告を提出した各自治体から特別徴収税額決定通知書が送付されます。
従業員それぞれ税額が異なり、毎月の給与から天引きするための事務処理は大きな手間です。
しかし、社労士にアウトソーシングすれば特別徴収税額決定通知書を提出するのみとなるため、安心してほかの業務に集中することが可能です。
給与計算で社会保険労務士にしかできない業務
社労士には「1号業務」と「2号業務」という独占業務があり、これは給与計算に大きく関わっています。
1号業務
社労士の1号業務とは労働や社会保険に関する法律に基づいた申請書の作成や手続代行で、具体的には以下となります。
・労働及び社会保険に関する法令に基づいた申請書等の作成
・申請書等に関する手続き代行
・労働及び社会保険に関する法令に基づいた申請、届出、報告、審査請求等の代理 など
社労士ができる申請・届出は主に
・健康保険・厚生年金保険の算定基礎届・月額変更届
・労働保険の年度更新手続
・健康保険の給付申請手続
・労働保険の休養給付・第三者行為の給付手続
・死傷病報告等の報告書の作成・手続
・解雇予定除外認定申請手続
・年金裁定請求手続
・審査請求・異議申立、再審査請求等の申請手続
・各種助成金申請手続
・労働者派遣事業等の許可申請手続
・求人申し込みの事務代理
です。
2号業務
2号業務は労働及び社会保険に関する法令に基づいた帳簿作成業務です。
「法定三帳簿」に該当する労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作成代行は社労士にしか行うことができません。
また、従業員を常時10名以上使用する事業所は就業規則の作成が義務付けられており、就業規則の作成も社労士の独占業務に該当します。
社会保険労務士に依頼できない給与計算業務
年末調整は税理士が行う
社労士は年末調整業務を行うことはできず、年末調整は税理士が行います。
以前は社労士と税理士は業務の境界が曖昧であり、社労士が年末調整を行うこともありました。
しかし、日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の長年の協議の結果、2016年に年末調整は税理士の業務範囲であると結論付けられました。
これにより、年末調整は社労士の業務範囲外であることが明確化されています。
2016年以降、社労士が年末調整業務を行うことは税理士法違反に該当し、年末調整は税理士に依頼する必要があります。
一方で、税理士は労働保険や社会保険に関する業務や賃金台帳の作成は社労士の独占業務にあたるため、請け負うことができませんので、社労士と税理士がうまく連携を取って給与関連の業務を遂行していく必要があります。
給与計算は社会保険労務士に依頼するとメリットが大きい
給与計算業務は作業そのものが多いだけでなく複雑な計算が多く、給与計算ミスや法令違反は労働トラブルにつながりかねません。
法律も頻繁に変わる中、正確に作業を行うためには社労士に依頼すると、煩雑な給与計算の作業をアウトソーシングできるだけでなく、社会保険関連の申請書の作成や手続き代行も行ってもらえます。
さらに、賃金台帳や就業規則の作成も社労士の独占業務となりますので、給与関連の業務を社労士に依頼するのは大きなメリットがあるといえます。
給与計算に関する業務が担当部署の大きな負担となっている場合は、社労士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。