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2022.12.23
社労士の業務範囲とは?社会保険労務士にできること・できないこと
社会保険労務士に依頼できる仕事は社員の入退社や雇用保険、健康保険の手続きや業務上発生したケガなどに対する労災の届出などがあります。
そのほか、毎月の給与計算や就業規則の作成も依頼することができます。
このように、人事・労務の業務に関して幅広く仕事ができる社労士ですが、できない業務も存在します。
この記事では、社労士の業務範囲について解説します。
社労士の業務範囲
社労士の業務は大きく分けて「1号業務」「2号業務」「3号業務」の3種類があり、1号業務と2号業務は社労士の独占業務となります。
1号業務
1号業務は主に「申請業務」と「手続き代行」です。
社会保険や労働に関する書類の作成や手続き代行を行う、社会保険労務士の独占業務です。
業務内容としては
・労働および社会保険に関する法令に基づいた申請書等の作成
・申請書等に関する手続き代行
・労働および社会保険に関する法令に基づいた、申請、届出、報告、審査請求等の代理
となります。
社労士に依頼できる申請、届出の具体例は以下となります。
・健康保険・厚生年金保険の算定基礎届・月額変更届
・労働保険の年度更新手続
・健康保険の給付申請手続
・労働保険の休養給付・第三者行為の給付手続
・死傷病報告書等の作成・手続
・年金裁定請求手続
・解雇予定除外認定申請手続
・審査請求・異議申し立て・再審査請求等申請
・各種助成金申請手続
・労働者派遣事業等許可申請
・求人申し込みの代理事務
2号業務
2号業務は労働社会保険に関する「帳簿書類の作成」です。
労働保険関連の帳簿としては「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」があり、これを「法定三帳簿」と呼んでいます。
2号業務も社労士の独占業務にあたりますので、これらの帳簿の作成代行を行えるのは社労士のみとなります。
また、常時10名以上の従業員を使用する会社に義務付けられている就業規則の作成も社労士に依頼することが可能です。
3号業務
3号業務は労務管理や社会保険に関する相談に応じ、または指導をすること、です。
1号業務と2号業務は書類作成がメインとなりますが、3号業務はコンサルティングとなります。
社労士の業務の中で3号業務のみ独占業務ではありませんので、資格がなくても労務関係のコンサルティングをすることはできますが、労務管理や人事評価のノウハウを持っており、労働関連の法律にも詳しい社労士に相談するメリットは大きいといえます。
社会保険労務士にできないこと
社労士にできない業務はほかの士業が行っている仕事内容です。
代理人交渉や民事トラブルに介入し代理人になるといった弁護士が行う業務はできません。
また、税理士や公認会計士が行う税金に関する業務もできません。
これらの業務はほかの士業と分担して行われます。
士業の業務範囲は重複しているものもありますが、独占業務となっている場合もあります。
その場合、専門の士業と連携して独占業務の部分はほかの士業に依頼することになります。
社労士は労働審判手続きの代理人とはなれない
社会保険労務士の業務には会社の労務管理やそのほかの労働に関する相談業務が含まれています。
実際、社内の労務問題を社労士に相談している会社も多くあります。
しかし、社労士は労働事件の裁判に代理人として関与することはできません。
労働審判手続きで代理人となれるのは弁護士
労働審判手続きは、当事者が主体となり手続きを行います。
法令により、裁判上の行為をすることができる当事者のほかは弁護士でなければ代理人になることができません。
労働審判手続きも裁判の1つですので、当事者の権利関係に関わります。
手続きも専門性が高い為、法律に関する専門的な知識や経験が不可欠で、一定の条件を満たすものではければ弁護士以外を代理人として許可されないことになっています。
労使紛争に関する相談はできる
社労士は労働審判手続きの代理人になることはできませんが、日常的に労使紛争や労使問題に関する相談を行うことは社労士のコンサルティング業務の範囲に含まれるため、可能です。
顧問社労士は通常は社内の就業規則や賃金規則、そのほかの諸規則について深く関与しているため社内の事情を理解しているだけでなく、給与計算や社会保険手続きに関与しているため、企業に密接に関与しています。
日頃から労使関係の相談を受けており、社内の内部事情を把握しているため、労使紛争が起こった場合に経営陣の性格なども理解したうえで法律上の見解だけでなく、会社に寄り添ったアドバイスをすることができます。
社労士は年末調整業務はできない
給与計算を社労士に依頼している企業は多くありますが、年末調整については注意が必要です。
年末調整については2016年に社労士と税理士の業務範囲が厳格化し、現在では税理士の業務となっています。
社労士が年末調整を行うのは税理士法違反
年末調整の業務については日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の間で議論が重ねられてきましたが、2016年6月に税理士業務であると明言されました。
これにより、社労士による年末調整の代行は税理士法違反として取り扱われることになりました。
給与計算を社労士に依頼するメリット
年末調整は給与データをもとに行いますので税理士に依頼した方がスムーズという考え方もあります。
しかし、社労士が給与計算業務を行うことは一定のメリットが存在します。
給与計算は勤怠管理と密接な関係があり、勤怠状況を正しく給与計算に反映させることが労務管理のうえで大切です。
雇用関係助成金の支給申請をした場合、賃金台帳と出勤簿の整合性が厳しく確認されるのもそのためです。
給与データから勤務時間等の労働問題を抽出し、早期に解決をはかることは社労士の専門業務となります。
このように、社労士は年末調整業務はできないまでも、労務管理の専門家としての立場として給与計算業務を行うことができます。
つまり、給与計算業務は社労士と税理士とで依頼するメリットが異なります。
社労士の業務範囲は広い
社労士の業務範囲は広く、企業の労務関係のさまざまな業務を相談できるだけでなく、アウトソーシングをすることができます。
法律により社労士には携わることができない業務も存在しますので、業務範囲を超えるものについては社労士がほかの士業と連携して業務をすることになります。
社労士事務所により専門の業務範囲も異なりますので、依頼したい内容の業務を取り扱っているかを相談してみることをおすすめします。