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2022.09.16
社会保険労務士と税理士の業務内容の違いは?給与計算はどっち?
税理士と社会保険労務士は会社運営にはなくてはならない専門家です。
しかし、両者の業務範囲を正確に認識するのは簡単ではないでしょう。
例えば、社員の給与計算には税金と社会保険が混在しており、税理士と社労士の業務の区分が分かれます。
そこでこのページでは、税理士と社労士の業務の範囲について解説します。
税理士の独占業務
士業にはその有資格者だけが行う事ができる独占業務があります。
資格がない人は無料でもその業務を行うことはできません。
まずは税理士の独占業務から見ていきましょう。
税務代理
税理士の税務代理業務は主に
①確定申告、青色申告承認申請等の代行
②税務調査の立ち合い
③税務署の更生や決定に対する不服申し立て
の3種類が挙げられます。
税務署類の作成
確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申告書などの税務署類を作成と税務署や都道府県などへの提出を代行します。
電子申告(e-Tax)の代理送信
e-Taxを利用して税務署類の送信を代理することができます。
税務訴訟の補佐人
税務訴訟で補佐人として弁護士とともに裁判所に出頭し、出廷陳述をすることができます。
会計参与
会計参与は株式会社の役員として取締役と共に決算書等を作成します。
会計参与になれるのは税理士と公認会計士のみです。
税理士の周辺業務
税理士の周辺業務には以下のようなものがあります。
会計業務
決算書の作成、経理帳簿の記帳代行、帳簿のチェック等。
財務分析
売上高と利益率の分析などを行い、経営課題などのアドバイスを行う。
社会保険労務士の独占業務
社労士の独占業務は以下となります。
社会保険・労働保険の手続き代行
社労士は労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所へ以下の事務手続きを代行することができます。
・労働保険の申告
・社会保険の算定基礎届、月額変更届
・労働社会保険の適用、年度更新、算定基礎届
助成金の申請
雇用や人材の能力開発に関する助成金の申請代行を行う事ができます。
労働者名簿・賃金台帳の作成
社労士は労働者名簿や賃金台帳の作成を代行することができます。
就業規則の作成・変更
労働基準法では「常時10人以上の労働者」を使用する使用者は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならないとしています。
就業規則の作成、変更は社労士の独占業務です。
行政訴訟・民事訴訟の補佐人
社労士には労働社会保険の行政訴訟や個別労働関係紛争の民事訴訟で弁護士と共に裁判所に出頭し、陳述することが認められています。
紛争解決の手続代理事務(特定社会保険労務士)
裁判外紛争解決手続(ADR)とは、裁判ではなく当事者双方の話し合いに基づき、あっせんや調停、仲裁などの手続きにより紛争の解決を図る方法です。
社労士には紛争解決の手続き代理事務を行うことができます。
ただし、これは特定社会保険労務士のみに認められている独占業務です。
社会保険労務士の周辺業務
社労士の周辺業務として人事・労務のコンサルティング業務が挙げられます。
社労士が行うコンサルティング業務の基本的な内容は以下の通りです。
・採用業務
・人事や雇用の管理
・就業規則
・労働環境
・福利厚生
・社員教育
・賃金・昇給
・評価制度
など。
給与計算業務はどちらの専門家に依頼する?
税理士と社労士の業務が重なるのが給与計算です。
給与計算には社会保険の算定と源泉徴収税を始めとする税金が混在しているため、給与計算の業務の中でも専門家が分かれることになります。
企業にしてみればできればどちらかにワントップでお願いしたいところではありますが、現実には難しいものがあります。
給与計算の業務
給与計算に関わる業務を整理すると以下のようになります。
・毎月の給与計算代行
「税理士」「社労士」双方に依頼することができます。
・算定基礎届の提出・労働保険の申告・月額変更届の提出
「社労士」の独占業務
・年末調整
「税理士」の独占業務
年末調整に必要な給与額・社会保険料の算定は社労士にもできる
年末調整については以前は社労士が携わっていた時期がありました。
しかし、2016年に「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する」こととなりました。
現在は年末調整に必要な源泉徴収などの作成は税理士の業務となり、社労士が行うことはできません。
ただし、年末調整に必要な給与額や社会保険料の算定等に関しては社労士に依頼しても問題ないということになっています。
給与計算を誰に依頼するか
では、給与計算業務は誰に依頼するのが正解なのでしょうか。
給与計算業務は主に「自社で行う」「税理士に依頼する」「社労士に依頼する」の3つの選択肢がありますが、それぞれのメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
自社で行う
創業当初は多くの会社が社長自らが給与計算を行います。
自社で給与計算を行うメリットはコストが掛からない点、給与ソフトの使い方に慣れればあまり難しさを感じない点、自分の給与を自分で計算できる点などです。
一方デメリットは時間を取られる点、専門家ではないため、正しく計算が行われているか不明な点などが挙げられます。
また、社長ではなく自社の経理スタッフに任せる場合のメリットとしては、社内のため融通が利きやすい点が挙げられ、デメリットとして人件費がかかる点、退職などにより携わるスタッフの確保が難しくなるケースが出る可能性が考えられます。
税理士に依頼する
社員が10名以上になると専門家に頼む会社が多くなります。
税理士に給与計算を頼むメリットは、経理と税務を一緒に依頼できる点、給与計算から年末調整まで一貫して処理を依頼できるという点です。
一方デメリットとして、労働保険・社会保険の手続き代行は出来ない、雇用関連助成金の申請代行は出来ない、労務相談をするのはむずかしいなどがあります。
社労士に依頼する
社労士に依頼するメリットは税理士に依頼する場合のデメリットを補完できる点です。
つまり、社労士に依頼すれば、入退社手続きも同時に依頼できる、給与計算に関連する労務手続きまでやってもらえる、労務相談に対応してもらえる、助成金申請も任せられる、などです。
デメリットとしては年末調整については税理士との連携が必要になる点です。
社会保険労務士と税理士の業務範囲を把握して依頼しましょう
社会保険労務士と税理士は法律で業務の範囲が定められています。
給与計算や入退社手続きなど、両者が出来る業務と出来ない業務がありますので、専門家の業務範囲を把握して適切に依頼することで、会社運営をスムーズに進めることができます。